税理士法人山中税務会計事務所

なるほど税務

グループ法人税制に内在する相続税節税の正当性?

2010年3月12日 15:49

 例年の税制改正であれば、年末の税制大綱を読めばある程度改正内容の輪郭が見えました。

 しかし、政権交代した平成22年税制改正は、大綱だけではどんな改正内容になるのか判りません。不安なので確定申告期限の直前3月10日ですが、税制改正に関わった(社)日本経済団体連合会の阿部経済基盤本部長を講師とする研修に出席しました。


 一番不安であったのは法人税の改正のうち、「グループ法人税制」でした。


 完全支配関係すなわち直接・間接100%保有関係のグループは、「ひとかたまり(一体性)の法人」と考えるのが基本的考えだそうです。

その上で
?グループ法人間の資産譲渡損益の繰り延べ
?グループ法人間の寄付・受贈益の損金・益金不算入
?グループ法人間の受取配当金に懸かる負債利子控除の不適用
?大法人の100%子会社に対する中小企業向け特例措置の適用制限
などが、改正の目玉のようです。


 しかし、講師曰く「法人税は法律として解読困難になっています。一番難しい条文になっている。」とのことでした。さらに詳細は政令に委ねる部分が多い。従って政令がどのように書かれて出来上がってくるかを見るまでは、正確な改正内容は判らないのだそうです。


 政令は国会の決議を得るものてばないので、これでは租税法律主義はどうなっちゃってるんだ・・・。

 さて、一番気になったのは、上記?です。

 グループ法人に個人とその同族関係者が含まれたため、相続税対策に利用される問題を含んでしまったとのこと。


 たしかに、親子が100%保有会社を別々に持っていれば、
親が100%支配する会社の資産を、子が100%支配する会社に移して課税の繰り延べを利用すれば、親が100%支配する会社は空っぽになってしまい株価はなくなってしまう。


 法人税ではこの手法の阻止はできないので、将来相続税・贈与税で規制される可能性があるとのこと。それまでは適法な相続税対策なのだそうです。


 でも、これも納得しがたい話です。
そんなザル法を成立させてよいのだろうか?
グループ法人間での損出を封じたいがため、結果としてもっと悪質な税逃れが、規制の網がかかるまでの間、早い者勝ちで行われてしまうのでは、公平な課税などとても唱えられない。

 事業承継税制の存在意義もなくなります・・・・。

2010/03/12 ky