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2010年1月14日 10:11
相続税の申告において、相続財産として計上する際注意が必要な資産として、いわゆる「名義預金」があります。
事務所では、相続税の申告手続きに着手する時には、「準備する書類一覧」「資料の収集の仕方」「申告までのスケジュール」等の書類を納税者に渡します。その時さらに「名義預金について」という文書も渡します。
その文書には、税法は実質課税を原則とするため、形式的な名義は何の意味も持たない旨が記載されています。更に名義預金を相続財産とするか否かを判断するにあたり具体的には、預金の管理者が誰であるか、使用収益権を誰が有しているか等の注意点も書かれています。
相続税の申告依頼者との顧問期間が短い場合や、初めての申告の場合には、特に念入りに「名義預金」の説明をします。また、長年のお付き合いでも必ず説明します。
昨年末に税務調査がありました。長年の間顧客である都内の地主さんの相続の調査です。配偶者に8000万円の名義預金が有りましたが、2000万円しか申告しませんでした。
調査官は名義預金について「先生の書類があるから仕方ないねー。」と言ってサラッと触れただけで終わりました。
配偶者は外で働いた事はありませんでしたが、昭和52年に木造のアパートを1棟借入金で建築していました。亡くなったご主人の不動産収入も含めお金の管理は全て配偶者が担当。過去にも勝手に多額の一括払いの保険契約を自分の名前で結んだりしたこともある配偶者です。被相続人と配偶者の現金預金は混在しているのが実状でした。
しかし、不動産所得が昔からあるのだから何とか配偶者名義の預金を、相続財産ではなく固有財産として申告出来ないかと思案しました。
その時役立ったのは、事務所にて残していた所得税の申告記録でした。顧客とお付き合いが始まった当初からの記録、つまりカルテです。過去30年間の所得を明記し、その間の借入返済記録や設備投資額を基に配偶者本人の固有財産は6000万円である文書を作成して、申告書に添付。これが調査官が口にした「先生の書類」です。
長いお付き合いが有ったからこそ可能だった申告でした。税理士は、顧客の財産のホームドクターのようなものです。長いお付き合いになれば、自然と財産のカルテは会計事務所に蓄積されていきます。往診に行ったり又は診察に来てもらったりして、信頼関係を地道に築く事が大切だと感じました。
2010/01/14 ky
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