税理士法人山中税務会計事務所

なるほど税務

税効果会計とイメージ

2009年5月 1日 13:19

4月下旬にもなると、3月決算の上場企業の財務諸表が公開されてきます。そにには「法人税等調整額」「繰延税金資産・負債」という科目名が見受けられます。税効果会計を採用した場合に用いられる科目です。

今から約10年ほど前、「会計ビッグバン」とも呼ばれる会計制度の国際化の流れのなかに、税効果会計も含まれていました。当時は税理士会の研修でも取り上げられ、税務関連の書籍にも税効果会計のものが多数出版され、また記事も多く掲載されました。平成11年8月には、国税庁より「税効果会計の適用と税務上の取り扱い」なる情報も公開されました。

もちろん現在でも税効果会計は生きています。しかし、適用が義務づけされているのは、いわゆる上場企業(細かい適用範囲はあります)です。私たち税理士が顧問の対象となる中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」にて税効果会計の適用は推奨されていても強制されていませんので、実務ではほとんど取り扱う事がないのが現状です。

当時は書籍を購入し研修も受けて一生懸命勉強したのに、全く使わなければすっかり忘れてしまった税理士がほとんどだと思います。

当事務所でも税効果会計を適用したのは、顧問先が店頭公開の準備の為、会計士から適用を強いられた事例と上場会社の完全子会社が親会社との連結決算の為に適用する事例の二つしかありません。

繰延税金資産は、極端な表現をすれば、「架空資産」「未実現資産」だと私は思います。会計と税務との取り扱いの差異により生じる税金を期間配分するものです。しかし、これは将来黒字決算になり納税が発生することが前提です。

今回の金融危機を発端とする急激な経済の悪化などの場合には、資産計上は慎重でなくてはなりません。「繰延税金資産回収可能性の判断基準」なるものが存在するのは知っていますが、果たして適正に判断出来るものなのかは、疑問があります。


税効果会計の目的は、既に述べたとおり税金の適正な期間配分ですが、資産計上により財務諸表の見栄えが良くなると考える向きもあります。

平成21年3月決算法人では、昨年秋からの急激な業績悪化で、予定納税の事業税の還付を申請する法人がかなりの数になるはずです。未収事業税の計上は、税効果会計では、「繰延税金負債」の計上になります。税効果という言葉とは裏腹に、財務諸表のイメージは良くないですねー・・・・。